現在、大手ハウスメーカーにおいて圧倒的な性能とコスパを誇るのが一条工務店です。当社をご検討頂くお客様も一条工務店の展示場に行って、性能が良い家を建てようと思ったという方がとても多いです。もちろん、意匠性や自然素材等の他の差別化事項もあるので、性能だけでお客様が住宅選びをされる訳ではありません。
性能、特にUa値のコスパだけでいったら正直なところ敵わないなと思います。ただし、実際の燃費とコスパで勝負と言われたら当社のような地域密着型工務店が逆転することが出来ます。
Ua値は燃費や快適性を決定する要素のひとつにすぎません。実際はこれらの要素が複合的に関係してきます。下記の要素は、Ua値と換気以外は設計の工夫や、施工の丁寧さで決まる部分が大きく、地域密着型工務店の強みが生かせる部分になります。
・断熱性Ua値
・気密性C値
・換気による熱損失
・冬の日射取得
・夏の日射遮蔽
・平面構成を出来るだけシンプルに凹凸少なくプランニングする。
・お客様のご要望を叶えながらできるだけ小さいプランニングをする。
普段、快適で省エネな住宅をコスパよくご提案するために、当社が考えて実施しているのは以上のようなことになります。これらの事をしっかりと実施していくと、自然温度差と呼ばれる無暖房状態での室温がどんどん高くなっていきます。
暖房しなくても真冬の最低室温が15度を下回らないという状況を作り出すことが出来るのです。例えば、室温を21度にしたいと考えた場合、無暖房の最低室温が15度であれば6度だけ暖房してあげればよいことになります。
外気温が氷点下を下回ると性能が低い住宅では室温が当たり前に2~3度という状態になります。室温が2度の場合、21度まで室温をあげようと思うと19度も暖房で熱を加えてあげる必要があります。この外気温と無暖房時の室温の差を自然温度差といいます。
自然温度差が大きければ大きい程、加える必要がある暖房は少なくなっていきます。これこそが、すっぴんの性能が高い状態といえます。この自然温度差は先ほど挙げた要素で表すとこうなります。
自然温度差 = (日射取得+内部発熱)/(Q値+C値/10)×延べ面積
これは、当社が指導を受けている松尾設計室の松尾和也先生が考案した式になります。すっぴんの性能を構成する要素がこれだけあるということです。それぞれ解説していきます。
日射取得熱とは、窓から得られる直射日光のことです。これは、同じ間取りの同じお家を建てたとしても、建築する場所によって変わってきます。隣家や敷地の形状で日当たりが変わるためです。
実際に、当社で設計契約をしていただいた場合は、その敷地形状、隣家の状況まですべて確認して等時間日影図というものを作成します。それに基づいて、日当たりの良い箇所にリビングを配置し、できるだけ冬にお日様を取り入れる設計をします。
これができると高気密高断熱住宅は限りなく無暖房住宅に近づいていきます。実際、当社で建てられたお客様は晴れた日の昼間は、暖房なしで室温23~24度を維持することができています。
内部発熱は、家電や人から出る熱のことです。これは、居住人数等で決まるため、設計上工夫できない個所になります。
Q値は聞きなれない用語だと思いますが、Ua値という指標が出る前はこちらが使われていました。Ua値は外皮による熱損失の平均値ですが、加えて換気による熱損失を加味した指標になります。外皮全体で割るのか、床面積で割るのか違いがありますが、断熱性と換気を両方合わせた指標だと思って頂ければよいと思います。
Q値は、どれだけ断熱材を分厚く入れるか、換気扇を熱交換するかどうかという話になってくるので、お金をかけただけ良くなります。
C値は気密性能の値になります。10で割っているのは大体、Q値に対して1/10程度影響があるよという事になります。Q値1.5でC値1.0の場合は、実質Q値1.6程度というかたちです。
1/10だからといって、C値2.0で良いという話ではありません。あくまでもC値1.0は切っている必要があります。
延べ床面積、これはやはり小さければ小さい程良いです。お客様のご要望をしっかりヒアリングした上で、コンパクトにしていくことが非常に重要になります。つまり、設計力によってコンパクトにできた場合、建築費も下がりますし、冷暖房負荷も下がるので、良いことしかありません。
現在、高気密高断熱ブームといってよい状況になっています。そうするとUa値をなんとか上げようと工務店、ハウスメーカーがしのぎを削る状況になります。実際、Ua値を高めるのはそれほど難しいことではありません。断熱材を分厚くして、窓を小さくすれば良いからです。
ただ、Ua値が良くなるからと窓を小さくしてしまうと、冬の日射取得が減ってしまうため、結果的に冷暖房負荷が増えてしまう場合があります。Ua値だけを求めるというのは、本質から外れてしまう可能性にもつながります。
実際、冷暖房負荷のシミュレーションを全棟やっていますが、一条工務店とのUa値の差を埋めるには、こういった設計上の工夫の組み合わせが大切になります。実際、これらの工夫ですっぴんの性能を高めることができると、この後の冷暖房計画で実際の冷暖房費を逆転することが可能になります。
冷暖房計画を完璧にすることで、少ないエアコン台数で家全体を温めたり、涼しくしたりすることが可能になります。大規模な全館空調システムはそれだけで数百万することも珍しくありません。当然10年後のメンテナンスコストもかかってきます。
通常の住宅は部屋に1台エアコンがあるので、1台のエアコンで家全体を空調できると、通常の住宅と比較して導入コストも安くなる上に、冷暖房費、交換費用も安くすることができます。
これは、一棟一棟それぞれで最適な冷暖房計画する必要があり、大手と苦手とする分野になります。一条工務店は、大量自社生産で性能のコスパを高めています。これは、中小工務店では絶対にできません。
地域密着型工務店が、コスパよく快適で省エネな住宅を提供するためには、一棟一棟の敷地条件、シミュレーション、設計の工夫の積み重ねをする必要があります。工務店選びの参考にしていただければ幸いです。