高気密高断熱住宅のUA値はどこまで必要?岐阜で目指したい断熱性能を松尾和也先生に聞く
注文住宅を検討していると、
「UA値は低いほどいいの?」
「断熱等級6まで必要?」
「HEAT20 G2ってよく聞くけれど、実際どこまで断熱性能を上げればいい?」
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
住宅会社によっては、
「UA値0.46なら十分です」
「これから建てるならG2レベルがおすすめです」
など、さまざまな説明をされるため、何を基準に判断すればいいのか分かりにくいところです。
そこで今回は、住宅の高断熱化や省エネ設計について全国で情報発信をされている松尾設計室の松尾和也先生に、
- 岐阜県ではどのくらいのUA値を目指すべきなのか
- 断熱等級6やHEAT20 G2をどう考えるのか
- UA値だけを追い求めてもいいのか
- 南面の窓と断熱性能の関係
- 本当に快適で省エネな家をつくるために大切なこと
について伺いました。
高気密高断熱住宅を検討している方には、ぜひ知っていただきたい内容です。
UA値とは?
UA値とは、住宅の内部から外部へどのくらい熱が逃げやすいのかを表す数値です。
正式には「外皮平均熱貫流率」と呼ばれます。
簡単に言えば、
UA値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高い住宅
ということになります。
例えば冬の場合、暖房で室内を暖めても、断熱性能が低ければ屋根・壁・窓などから熱がどんどん外へ逃げていきます。
一方、断熱性能の高い住宅では、一度暖めた熱を家の中に保ちやすくなります。
そのため、少ないエネルギーでも快適な室温を維持しやすくなるのです。
岐阜県ではUA値をどこまで高めるべき?
住宅の断熱性能を考えるときに重要なのが、建築する地域の気候です。
岐阜県内でも地域によって気候条件は異なりますが、小栗材木店が主に家づくりを行っている恵那市・中津川市・瑞浪市・土岐市周辺では、冬の寒さを考慮した断熱設計が非常に重要です。
今回の対談では、松尾先生から5地域ではHEAT20 G2レベルを一つの目安として考えることが重要という話がありました。
HEAT20 G2の基準は地域によって異なりますが、5地域ではUA値0.34程度が一つの目安になります。
もちろん、
「UA値0.34なら絶対に快適」
「0.35になったら急に寒くなる」
というものではありません。
ただ、これから数十年間住み続ける住宅であることを考えると、最低基準ではなく、長期的な快適性や冷暖房費まで考えた性能を検討することが大切です。
小栗材木店も以前はUA値0.4台の住宅を建てていました
小栗材木店でも、以前はUA値0.4台の住宅を多く建てていました。
当時としては十分高性能な住宅でした。
しかし、実際に住宅を建て、お客様の暮らし方や冷暖房の状況を見ていく中で、
「もっと家全体の温度差を小さくしたい」
「もっと少ないエネルギーで快適にしたい」
と考えるようになりました。
そこで現在は、住宅の形状やプランによって違いはありますが、UA値0.3前後を目標に断熱設計を行うことが多くなっています。
実際に性能を高めていくと、数字だけではなく、家に入ったときの体感にも違いが出てきます。
特に真冬や真夏の完成見学会では、その違いを感じやすくなります。
UA値が低ければ低いほど良い?
ここまで読むと、
「それならUA値はできるだけ低くすればいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、ここが今回の対談で特に重要なポイントです。
UA値だけを良くすることが、本当に省エネで快適な住宅につながるとは限りません。
なぜなら、UA値には「太陽の熱をどのくらい取り込めるか」という考え方が直接反映されないからです。
特に岐阜県のように冬でも晴れる日がある地域では、南側の窓から入る太陽熱を利用することが非常に重要になります。
UA値を良くするために窓を小さくするのは正解?
窓は壁よりも熱が逃げやすい部分です。
そのためUA値だけを良くしようとすると、
「窓を小さくすればUA値は下がる」
という考え方になりがちです。
確かに計算上のUA値は良くなる可能性があります。
しかし、南側の窓まで小さくしてしまうと、冬に太陽から得られる熱まで減ってしまいます。
冬の日中、南側の大きな窓から日射を取り込めれば、太陽のエネルギーによって室内を暖めることができます。
つまり、
断熱性能を上げることと、太陽熱を上手に利用することの両方が大切
なのです。
UA値だけを見て住宅を評価すると、この部分を見落としてしまう可能性があります。
南面の窓は「無料の暖房」になる
小栗材木店が大切にしているのが、パッシブ設計です。
パッシブ設計とは、機械設備だけに頼るのではなく、
- 太陽の光
- 太陽の熱
- 風
- 建物の配置
- 窓の位置
- 軒や庇
など、自然の力を上手に利用する設計です。
冬は南側の窓から太陽熱を取り込みます。
一方で夏は、そのまま日射を入れてしまうと室温が上がりすぎてしまいます。
そこで、軒や庇、外付けブラインドなどを利用して日射を遮ります。
つまり、
冬は太陽を入れて、夏は太陽を遮る。
この設計が非常に重要です。
南側の窓は、冬にはいわば「無料の暖房」のような役割を果たします。
そのため、
「UA値を0.02下げるために南側の窓を小さくする」
よりも、
「多少UA値が変わっても、冬の日射取得をしっかり確保する」
方が、結果として暖房費を抑えられるケースもあります。
本当に見るべきなのは「UA値」だけではなく暖房負荷
そのため小栗材木店では、UA値だけを見て住宅の性能を判断しません。
大切なのは、
その家を快適な室温に保つために、実際どれくらいの暖房エネルギーが必要なのか
ということです。
これを「暖房負荷」と考えます。
同じUA値の住宅でも、
- 南側に大きな窓がある家
- 南側にほとんど窓がない家
- 南側に建物があり日射が入らない家
- 日射遮蔽がきちんとできている家
- 西日が大量に入る家
では、実際の冷暖房エネルギーは変わります。
だからこそ、本当に省エネな住宅をつくるなら、
UA値+日射取得+日射遮蔽+冷暖房負荷
まで考える必要があります。
「高気密高断熱です」だけでは判断できない
現在、多くの住宅会社が、
「高気密高断熱住宅です」
と説明しています。
しかし、「高気密高断熱」という言葉そのものに明確な統一基準があるわけではありません。
そのため住宅会社を比較するときは、
「高気密高断熱ですか?」
だけではなく、もう一歩踏み込んで質問してみてください。
例えば、
「標準的な住宅のUA値はいくつですか?」
「C値は実測していますか?」
「この家の年間冷暖房負荷は計算していますか?」
「南面の日射取得はどのように考えていますか?」
「夏の日射遮蔽はどうしていますか?」
こうした質問をすると、その住宅会社が数値だけではなく、建物全体を考えて設計しているかが分かりやすくなります。
UA値とC値は何が違う?
高気密高断熱住宅を調べていると、「UA値」と一緒に「C値」という言葉もよく出てきます。
UA値が断熱性能を表すのに対して、C値は住宅の気密性能を表します。
簡単に言えば、
UA値=熱の逃げにくさ
C値=家にどのくらい隙間があるか
です。
どれだけ断熱材を厚くしても、建物に多くの隙間があれば、そこから空気が出入りしてしまいます。
そのため、高断熱住宅では気密性能も非常に重要になります。
小栗材木店では、設計上の数値だけではなく、実際に完成した建物で気密測定を行い、性能を確認しています。
高断熱住宅は空調計画までセットで考える
断熱性能を高める目的は、単純にUA値の数字を良くすることではありません。
最終的な目的は、
少ないエネルギーで家全体を快適にすること
です。
住宅の断熱性能を十分に高めると、必要な冷暖房能力を小さくできます。
その結果、一般的な家庭用エアコンを利用しながら、少ない台数で家全体を空調するという選択肢も出てきます。
小栗材木店では、
- 床下エアコン
- 小屋裏エアコン
などを利用した全館空調を採用しています。
重要なのは、高価な空調設備だけで快適性をつくるのではなく、
まず家そのものの性能を高め、そのうえでシンプルな設備で空調すること
です。
松尾式小屋裏エアコンも住宅性能があってこそ
今回の対談では、松尾先生が開発されている「松尾式小屋裏エアコン」についてもお話を伺いました。
小屋裏エアコンは、夏場に小屋裏に設置したエアコンを利用して住宅全体を冷房する考え方です。
ただし、
「小屋裏エアコンを入れれば、どんな家でもエアコン1台で涼しくなる」
というわけではありません。
断熱性能、気密性能、日射遮蔽、間取り、空気の流れなどをきちんと計画して、初めて成立する仕組みです。
つまり、設備よりも先に、
家の基本性能と設計が重要
ということです。
最新の松尾式小屋裏エアコンver3はこちらで詳しく解説しています。
数字だけでは分からない。高断熱住宅は実際に体感するのがおすすめ
UA値0.3。
UA値0.4。
数字だけを見ても、その違いをイメージするのは難しいと思います。
そこで、高気密高断熱住宅を検討している方には、ぜひ真夏や真冬に実際の住宅を体感することをおすすめします。
完成見学会やモデルハウスに行ったら、LDKだけを見るのではなく、
- 玄関
- 廊下
- トイレ
- 脱衣室
- 2階
- 北側の部屋
なども歩いてみてください。
そして、
「部屋ごとの温度差がどのくらいあるのか」
を体感してみてください。
高断熱住宅の本当の良さは、
「リビングが暖かい」
ことではなく、
家全体の温度差が小さいこと
にあります。
岐阜で高気密高断熱住宅を建てるなら「UA値+設計」で考える
高気密高断熱住宅を検討するとき、UA値は非常に重要な指標です。
しかし、
UA値だけで住宅の良し悪しを判断するのはおすすめしません。
重要なのは、
- 十分な断熱性能
- 高い気密性能
- 冬の日射取得
- 夏の日射遮蔽
- 冷暖房負荷
- 空調計画
をセットで考えることです。
特に岐阜県のように夏は暑く、冬は寒い地域では、季節ごとに太陽のエネルギーを上手にコントロールする設計が重要になります。
まとめ|UA値は「目的」ではなく快適な家をつくるための手段
UA値は、高気密高断熱住宅を判断するうえで非常に分かりやすい指標です。
しかし、
UA値を良くすること自体が家づくりの目的ではありません。
本当に大切なのは、
「少ないエネルギーで、夏も冬も家全体を快適にできるか」
ということです。
そのためには、
① 十分な断熱性能を確保する
② 気密性能を確保する
③ 冬は南側の窓から日射を取り込む
④ 夏は日射をしっかり遮る
⑤ 冷暖房負荷を計算する
⑥ 住宅性能に合った空調計画をする
という考え方が重要です。
小栗材木店では、UA値だけを追いかけるのではなく、断熱・気密・日射・空調をまとめて設計することで、家庭用エアコンのようなシンプルな設備でも家全体を快適にできる住宅を目指しています。
岐阜県恵那市・中津川市・瑞浪市・土岐市周辺で高気密高断熱住宅をご検討の方は、ぜひ完成見学会やモデルハウスで実際の室内環境を体感してみてください。
図面やUA値だけでは分からない「家全体の快適さ」を実際に感じていただけると思います。
Youtube撮影日:2024年9月8日 @株式会社小栗材木店瑞浪モデルハウス
株式会社松尾設計室 代表取締役
プロフィール
松尾和也(まつお・かずや) 一級建築士・松尾設計室代表。1975年兵庫県出身。「夏涼しく冬暖かい住宅を経済的に実現する」ことをモットーに住宅設計を多数手掛けるほか、エコハウスに関する執筆や講演、技術指導を積極的に行う。YouTubeでも家づくり情報を配信。著作に「ホントは安いエコハウス」(日経BP)、「エコハウス超入門」(新建新聞社)、「これからのリノベーション断熱・気密編」(新建新聞社[共著])などがある。


